株式会社 別子飴本舗知的資産報告書

この報告書は、愛媛県新居浜市で140年の歴史を持つ和菓子メーカー、株式会社別子飴本舗さんの知的資産経営報告書として、愛媛県の行政書士2名と岡山県の行政書士1名が、企業に協力して完成しました。

四国で最初の知的資産報告書として、平成26年10月15日の日経新聞愛媛県版に紹介されたこともあり、複数の金融機関、個人の方などに、興味を持って頂きました。

平成26年11月完成

知的資産経営支援について

1.知的資産経営

(1)知的資産経営とは

 組織の大きさにかかわらず、その特徴や知恵など財務諸表に掲載されない経営に有益なものを「知的資産」といい、これは単に特許や商標といった「知的財産」だけではなく、組織が保有している人材、技術、組織力、顧客とのネットワーク、ブランドなどが含まれます。こうした目に見えにくい要素を生かして、経営課題の克服や新しい経営戦略の構築、円滑な事業承継への取り組みなどを知的資産経営といい、強みを活かす経営とか、知恵の経営とも言われる場合もあります。

 この知的資産は一般的に、①人的資産(従業員の退職と一緒に失われる資産)、②構造資産(従業員の退職時に企業内に残留する資産)、③関係資産(企業の対外的関係に付随した全ての資産)の3つに分類されています。

 この分類に加え④補完資産を考慮することを提案しています。これは①から③が企業が保有・管理・利用可能なものを著すのに対し、④補完資産は、他社が保有又は管理する経営資源で一時的あるいは継続的に利用可能なものをいいます。

(2)知的資産経営の一般的な説明

 知的資産経営は、一般的に以下のように説明され、多くの専門家もこれを踏襲しています。以下は、近畿経済産業局ホームページより転載

知的資産

「知的資産」とは特許やブランド、 ノウハウなどの「知的財産」と同義ではなく、それらを一部に含み、さらに組織力、人材、技術、経営理念、顧客等とのネットワークなど、 財務諸表には表れてこない目に見えにくい経営資源の総称を指します。「知的資産」は企業の本当の価値・強みであり、企業競争力の源泉です。企業経営・活動は、知的資産の活用なしには成り立たないものなのです。

 

知的資産経営

そのようなそれぞれの会社の強み(知的資産)をしっかりと把握し、活用することで業績の向上や、会社の価値向上に結びつけることが「知的資産経営」なのです。

企業が勝ち残っていくためには、差別化による競争優位の源泉を確保することが必要です。差別化を図る手段は色々ありますが、 特に大きなコストをかけなくても身の回りにある「知的資産(見えざる資産)」を活用することによって、他社との差別化を継続的に実現することができ、 ひいては経営の質や企業価値を高めることができるのです。

 

知的資産経営報告書

「知的資産経営報告書」とは、企業が有する技術、ノウハウ、人材など重要な知的資産の認識・評価を行い、それらをどのように活用して企業の価値創造につなげていくかを示す報告書です。過去から現在における企業の価値創造プロセスだけでなく、 将来の中期的な価値創造プロセスをも明らかにすることで、企業の価値創造の流れをより信頼性をもって説明するものです。

 

◆「知的資産経営報告書」の作成・開示

 従来の財務諸表を中心とした評価では、中小・ベンチャー企業の真の姿(価値)を知ってもらえないことがあると思います。 また、経営者にとって当たり前のことでも、周りの人が必ずしもそれを知っているとは限りません。 知的資産経営報告書は、中小・ベンチャー企業が有する技術、ノウハウ、人材など重要な知的資産を的確に認識し、相手(ステークホルダー)に伝えるために大変有効なものです。

企業の存続・発展にとって、ステークホルダー(顧客、金融機関、取引先、従業員等)に会社の優れた部分を知ってもらうことは大変重要であり、 正確な財務諸表に加え、非財務の情報(自社の持つ知的資産の優位性)を伝えることが必要です。 伝えたい相手に自社の優位性をきちんと伝えるために、「知的資産経営報告書」を作成し、開示することで自社の真の姿(価値)を知ってもらいましょう。

2.知的資産経営支援の現状

 

 多くの人が、前記の一般的な説明を踏襲しすぎるために、知的資産経営とは知的資産経営報告書を作成することであると誤解されていることが多く、支援者は、知的資産経営報告書を書くのが仕事と思い、書き方の研修会を繰り返しているケースが多く見受けられます。

行政機関もまた、知的資産経営を進めるということは、知的資産経営報告書を作成することだという考え方により、報告書作成に対して、補助制度を設けている場合があります。  

このようにして、ほとんどの知的資産経営報告書が、県など行政機関で、知的資産経営報告書の作成に対し、助成金が出る地域または期間に集中しています。この考え方では、助成金が出ない全国ほとんどの地域では、知的資産経営支援に本格的に取り組む専門家も少なく、その結果、中小企業の支援組織である商工会議所や経営者も、知的資産経営について知ることが出来ず、結果として、企業にある目に見えない経営資源の活用が進みにくい状況を作り出しています。

3.現在の知的資産経営支援の何が問題なのか

 

 前述のように、行政書士、中小企業診断士等専門家による知的資産経営とは、知的資産経営報告書に対して行政機関から助成金が支給される地域でのみ行われており、これらの専門家は、知的資産経営報告書作成による報酬を業として行っており、単なる事務代行や代書業務をする結果、報告書を作成した企業の経営を良くすることや、経営課題を解決することを直接意図したものではなくなります。

 自ら費用負担しないことから、経営者も自社の知的資産経営報告書について無関心であり、経営者も、その作成した記憶すらない場合もあります。これは、企業に負担がゼロであるなら良いということで、一部の専門家と担当者だけで作成したもので、本当の意味での企業の無形資産の掘り起こしをしておらず、経営者の判断を仰ぐことも無かったためだと思われます。

 こうした問題点が発生する原因は、知的資産経営報告書を作成しても、それにより金融機関の融資額が増えるわけでも、借入金利が低くなるわけでもないことによります。

BtoBの場面では、取引先の相手企業は、その企業の情報を知る手段としてこの知的資産経営報告書をじっくり読む場合もありますが、大きなパンフレット(会社案内)という面はぬぐえません。一方、BtoCの場面では、ほとんど消費者はこの知的資産経営報告書に関心がなく、目にするケースも稀です。

 こうした状況が発生するもうひとつの原因は、専門家が中小企業基盤整備機構が作成した、モデルケースを踏襲しすぎているためであり、知的資産経営報告書が単なる様式の穴埋め的なものになっているためだと思われます。さらに、専門家が3~4人で、4~6箇月かけて作成するケースが一般的と言われることから、その作成費用は50万円にもなり、これだけの費用をかけて効果の発生額や時期が未定であるなら、助成金等の制度がなければこの報酬額を経営者が直接負担することは極めて少ないといえます。

4.知的資産経営支援のあるべき姿

 

 それでは、知的資産経営支援に求められるものは何なのでしょうか。それは、典型的な様式にとらわれ穴埋め的に作成し、経営者がその存在を忘れるほど効果を期待できない資料を作るのではなく、経営者の思いを反映させて、その経営戦略にマッチしたもの、経営者や部下の営業ツールとなるものなどの目的にあったもので、しかもそれは専門家が客観的な企業のデータやヒヤリングに基づき作成された信頼性の高いものであることが求められます。さらに、これを短期間で行わなければ中小企業に求められる経営スピードにマッチしません。作成に6箇月もかかっていては半期が過ぎてしまいます。

 また、財務諸表に掲載されない知的資産を考える場合、資産という言葉にとらわれ、特許やブランドといった、いわゆる資産価値があるものを限定的にとらえるべきではなく、財務諸表に掲載されているモノの別の側面、つまり認識されないものも含まれると考えるべきなのです。無形の資産、見えない資産とは、見ているが認識されないものも含むのです。また、一見資産を得たようでありながら、たとえば欠陥建物などのようにリスクを背負う可能性を考えれば、それは目に見えない(認識されにくい)負債であるとも言えます。

こうしたものを認識して経営を行うことも知的資産経営であり、その支援であると考えるべきなのです。

5.今後の知的資産経営支援の取組

 

 あるべき姿の知的資産経営支援を実施するための具体的な取組は、経営者の抱える経営課題の解決、経営戦略の構築実践のサポート、事業承継・事業継続を意識した、財務諸表記載の資産と財務諸表には記載されない資産の両方を活用した実効性のある支援を行うことになります。このことにより企業が利益を確保またはリスクを低減させることにより、経営支援者はこの企業に実利をもたらすことで自らの報酬を得るべきなのです。

 これを実現するため本会では、知的資産経営支援に関わる専門家が、自ら研鑽を重ね、さらに効果的な知的資産経営支援のあり方を構築するとともに、全国に幅広いネットワークを構築し、自らの視野を広くすると共に、企業支援の具体的な案件に対する幅広い意見を集めることでスピード感をもって企業支援に当たると同時に、企業の業務提携先等の独自情報を経営者に提供することが必要になり、知的資産経営支援について既に一定の知見を持った専門家と深い興味を持つ専門家によるネットワークを構築し組織化します。また本会は、支援に意欲を持った専門家であれば入会しやすく、そこで開発した、使いやすく効果的な知的資産経営支援ツールの作成により支援の円滑化と効果を高めます。

6.なぜ行政書士なのか

 

 知的資産経営報告書は、企業が行えばよいものですが、経営支援全般と同様、専門家が加わることによるメリットがあります。それには、経営者が気づかない知的資産の抽出、第三者の視点による客観性公平性の確保、人的資産の構造資産化の支援、営業秘密保護に関する具体的提案(不正競争防止法による保護、公証制度の活用等)などがあります。

 ではなぜ行政書士なのでしょうか。それを考えるために、法で定められた行政書士の役割について見てみます。行政書士法で定められた内容をまとめると、行政書士は、官公署に提出する書類その他権利義務又は事実証明に関する書類を作成することを業とし、これに関する代理、相談に応じることが出来ます。ただし、その業務を行うことが他の法律において制限されているものについては、業務を行うことが出来ません。

 この規定を逆にみると、行政書士は国家資格を持った専門家として、他の法律で制限されていなければ、官公署に提出する書類その他権利義務又は事実証明に関する書類の作成を業とできることになります。この行政書士業務は、レンコンに例えられることがあり、さまざまな法律関係業務のうち、他士業の法律により制限された範囲が、穴として抜かれていきその残った部分が行政書士の業務範囲となります。したがって、他士業の多くの業務とも密接に接しているのです。このことから、中小企業が営む多様な業務の中で、さまざまな場面でかかわりを持つことが出来ます。

このように個人から法人の業務まで、広範囲に業務が広がっていることが、行政書士が知的資産経営のようなさまざまな展開が予想される経営支援に適していると言えるのです。さらに、行政書士は全国すべての都道府県に単位会を設置し、約44,000人の行政書士が会社設立、経営支援、相続、後見等さまざまな業務を行っており、中小企業経営の経営または組織の構成員のさまざまな問題に対応できる体制が整っています、この構成員が、倫理研修を含んだ各種研修等を各都道府県単位で継続的に行っていることもメリットと言えます。

日本知的資産経営支援協会

 本会は、行政書士のネットワークという知的資産を活用し、全国にネットワークを構築し、中小企業の経営課題解決、経営戦略のサポート等を行います。

 あわせて、ビジネスマッチングにより新商品・サービスの展開、事業承継、M&A、事業継続サポートを行います。

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